2015.07.08
著作権侵害差止等請求控訴事件(最高裁HP)

事件番号

知的財産高等裁判所/平成25(ネ)10089号

判決日付

平成26年9月17日

事案の概要

本件は,小説家,漫画家又は漫画原作者である被控訴人らが,いわゆる「自炊」行為を代行する業者である控訴人に対し,控訴人が顧客(利用者)から電子ファイル化の依頼があった書籍について,著作権者 の許諾を受けることなく,スキャナーで書籍を読み取って電子ファイルを作成 し(以下,「スキャン」あるいは「スキャニング」という場合がある。),その電子ファ イルを顧客に納品しているところ,注文を受けた書籍には,被控訴人らが著作権を有する作品が多数含まれている蓋然性が高く,今後注文を受ける書籍にも含まれる蓋然性が高いことから,被控訴人らの著作権(複製権)侵害を主張し,①著作権法112条1項に基き,第三者から委託を受けて原告作品が印刷された書籍を電子的方法により複製することの禁止を求めるとともに,②不法行為に基づく損害賠償を求めた事案である。

判事事項

顧客から電子ファイル化の依頼があった書籍について,著作権者 の許諾を受けることなく,スキャナーで書籍を読み取って電子ファイルを作成するいわゆる「自炊」行為を代行する業者による自炊行為の複製行為の主体が当該業者であり,著作権30条1項の適用が否定された事例

裁判要旨

「複製」行為の有無について
「著作者は,その著作物を複製する権利を専有する。」(著作権法21条)ところ,「複製」とは,著作物を「印刷,写真,複写,録音,録画その他の方法により有形的に再製すること」である(同法2条1項15号)。そして,複製行為の主体とは,複製の意思をもって自ら複製行為を行う者をいうと解される。
本件サービスは,前記1(1)で認定したとおり、①利用者が 控訴人に書籍の電子ファイル化を申し込む,②利用者は,控訴人に書籍を送付する,③控訴人は,書籍をスキャンしやすいように裁断する,④控訴人は,裁断した書籍を控訴人が管理するスキャナーで読み込み電子ファイル化する,⑤完成した電子ファイルを利用者がインターネットにより電子ファイルのままダウンロードするか又はDVD等の媒体に記録されたものとして受領するという一連の経過をたどるものであるが,このうち上記④の、裁断した書籍をスキャナーで読み込み電子ファイル化する行為が,本件サービスにおいて著作物である書籍について有形的再製をする行為,すなわち「複製」行為に当たることは明らかであって,この行為は,本件サービスを運営する控訴人のみが専ら業務として行っており,利用者は同行為には全く関与していない。
そして,控訴人は,独立した事業者として,営利を目的として本件サービスの内容を自ら決定し,スキャン複製に必要な機器及び事務所を準備・確保した上で,インターネットで宣伝広告を行うことにより不特定多数の一般顧客である利用者を誘引し,その管理・支配の下で,利用者から送付された書籍を裁断し,スキャナで読み込んで電子ファイルを作成することにより書籍を複製し,当該電子ファイルの検品を行って利用者に納品し,利用者から対価を得る本件サービスを行っている。 そうすると,控訴人は,利用者と対等な契約主体であり,営利を目的とする独立した事業主体として,本件サービスにおける複製行為を行っているのであるから,本件サービスにおける複製行為の主体であると認めるのが相当である。

著作権30条1項の適用の可否について
著作権法30条1項は、①「個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用することを目的とする」こと、及び②「その使用する者が複製する」ことを要件として,私的使用のための複製に対して著作権者の複製権を制限している。 そして,前記2のとおり,控訴人は本件サービスにおける複製行為の主体と認められるから,控訴人について,上記要件の有無を検討することとなる。しかるに,控訴人は,営利を目的として,顧客である不特定多数の利用者に複製物である電子ファイルを納品・提供するために複製を行っているのであるから,「個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用することを目的とする」ということはできず,上記①の要件を欠く。また,控訴人は複製行為の主体であるのに対し,複製された電子ファイルを私的使用する者は利用者であることから,「その使用する者が複製する」ということはできず,上記②の要件も欠く。
したがって,控訴人について同法30条1項を適用する余地はないというべきである。

全文

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/579/084579_hanrei.pdf

キーワード

著作権 著作権侵害 複製権 自炊 自炊行為 代行業者 私的利用