2015.07.08
殺人,殺人未遂,現住建造物等放火被告事件(最高裁HP)

事件番号

 最高裁判所第二小法廷/平成25(あ)729

判決日付

平成27年5月25日

事案の概要

本件は,平成16年8月2日の未明,被告人が,自宅の東西に隣接する2軒の家屋内等において,親族を含む隣人ら8名を,順次,骨すき包丁で突き刺すなどして,7名を殺害し,1名に重傷を負わせた後,母親が現住する自宅にガソリン等をまいて放火し,全焼させた事案である。

判事事項

 妄想性障害に罹患していた被告人が実行した殺人,殺人未遂等の事案につき,事理弁識能力及び行動制御能力が著しく低下していたとまでは認められないとする原判決が是認された事例である。

判旨抜粋

本件犯行は,長年にわたって被害者意識を感じていた被告人が,母屋の飼い犬の件や西隣の家族の長男の駐車の件といったトラブルにより被害者らに対する怒りを募らせ,殺意を抱くにまで至り,犯行前夜の自宅北側に居住する別の隣人との口論をきっかけに,この際被害者らの殺害を実行に移そうと決断し,おおむね数年来の計画どおりに遂行したものであって,その行動は,合目的的で首尾一貫しており,犯行の動機も,現実の出来事に起因した了解可能なものである。被告人が犯行当時爆発的な興奮状態にあったことをうかがわせる事情も存しない。被告人は,妄想性障害のために,被害者意識を過度に抱き,怨念を強くしたとはいえようが,同障害が本件犯行に与えた影響はその限度にとどまる上,被告人の妄想の内容は,現実の出来事に基礎を置いて生起したものと考えれば十分に理解可能で,これにより被害者意識や怨念が強化されたとしても,その一事をもって,判断能力の減退を認めるのは,相当とはいえない。
そうすると,被告人が,妄想性障害により,その判断能力に著しい程度の障害を受けていたとする五十嵐鑑定意見は,その結論を導く過程において,妄想の影響の程度に関する前提を異にしているといわざるを得ない。五十嵐鑑定意見につき,本件犯行に特有な事情について十分な考察がないまま結論を下しているとする原判決は,これと同様の判断を示したものと理解できる。また,以上によれば,被告人の事理弁識能力及び行動制御能力が著しく低下していたとまでは認められないとする原判決は,経験則等に照らして合理的なものといえ,所論がいうような事実誤認があるとは認められない。

全文

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/113/085113_hanrei.pdf

キーワード

妄想性障害 事理弁識能力 行動制御能力 責任能力 心神喪失 心神耗弱 殺人 殺人未遂 放火