2016.06.28
損害賠償請求事件(最高裁HP)

事件番号

最高裁判所第三小法廷/平成26(受)1434

判決日付

平成28年3月1日

事案の概要

本件は,認知症にり患したA(当時91歳)が旅客鉄道事業を営む会社である第1審原告Xの駅構内の線路に立ち入りXの運行する列車に衝突して 死亡した事故(以下「本件事故」という。)に関し,Xが,Aの妻である被告Y1(当時85歳)及びAの長男である被告Y2に対し,本件事故により列車に遅れが生ずるなどして損害を被ったと主張して,民法709条又は714条に基づき,損害賠償金719万7740円及び遅延損害金の連帯支払を求める事案である。

判示事項

  1. 精神障害者と同居する配偶者と民法714条1項にいう「責任無能力者を監督する法定の義務を負う者」
  2. 法定の監督義務者に準ずべき者と民法714条1項の類推適用
  3. 線路に立ち入り列車と衝突して鉄道会社に損害を与えた認知症の者の妻が法定の監督義務者に準ずべき者に当たらないとされた事例
  4. 線路に立ち入り列車と衝突して鉄道会社に損害を与えた認知症の者の長男が法定の監督義務者に準ずべき者に当たらないとされた事例

裁判要旨

  1. 精神障害者と同居する配偶者であるからといって,その者が民法714条1項にいう「責任無能力者を監督する法定の義務を負う者」に当たるとすることはできない。
  2. 法定の監督義務者に該当しない者であっても,責任無能力者との身分関係や日常生活における接触状況に照らし,第三者に対する加害行為の防止に向けてその者が当該責任無能力者の監督を現に行いその態様が単なる事実上の監督を超えているなどその監督義務を引き受けたとみるべき特段の事情が認められる場合には,法定の監督義務者に準ずべき者として,民法714条1項が類推適用される。
  3. 認知症により責任を弁識する能力のない者Aが線路に立ち入り列車と衝突して鉄道会社に損害を与えた場合において,Aの妻Y1が,長年Aと同居しており長男Y2らの了解を得てAの介護に当たっていたものの,当時85歳で左右下肢に麻ひ拘縮があり要介護1の認定を受けており,Aの介護につきY2の妻Bの補助を受けていたなど判示の事情の下では,Y1は,民法714条1項所定の法定の監督義務者に準ずべき者に当たらない。
  4. 認知症により責任を弁識する能力のない者Aが線路に立ち入り列車と衝突して鉄道会社に損害を与えた場合において,Aの長男Y2がAの介護に関する話合いに加わり,Y2の妻BがA宅の近隣に住んでA宅に通いながらAの妻Y1によるAの介護を補助していたものの,Y2自身は,当時20年以上もAと同居しておらず,上記の事故直前の時期においても1箇月に3回程度週末にA宅を訪ねていたにすぎないなど判示の事情の下では,Y2は,民法714条1項所定の法定の監督義務者に準ずべき者に当たらない。
    (1,2につき補足意見,4につき意見がある。)

全文

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/714/085714_hanrei.pdf

キーワード

民法709条,民法713条,民法714条,民法752条,精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(平成25年法律第47号による改正前のもの)20条,認知症,損害賠償請求,列車遅延,列車事故,監督義務者,責任無能力者