2016.12.19
保全異議申立決定に対する保全抗告事件(最高裁判所HP)

事件番号

知的財産高等裁判所 平成28年(ラ)第10009号

判決日付

平成28年11月11日

事案の概要

編集著作物たる著作権判例百選[第4版](本件著作 2 物)の共同著作者の一人である相手方は,抗告人が発行しようとしている著作権 判例百選[第5版](本件雑誌)は本件著作物を翻案したものであるから,本件 著作物の著作権を侵害するなどと主張して,本件著作物の翻案権並びに二次的著作物の利用に関する原著作物の著作者の権利を介して有する複製権,譲渡権及び貸与権,又は著作者人格権(氏名表示権及び同一性保持権)に基づく差止請求権(本件差止請求権)を被保全権利として,抗告人による本件雑誌の複製・頒布等を差し止める旨の仮処分命令を求める申立て(本件仮処分申立て) をした。

これに対し,東京地方裁判所は,平成27年10月26日,この申立てを認める仮処分決定(本件仮処分決定)をした。これを不服とした抗告人が保全異議を申し立てたが,原決定は,平成28年4月7日,本件仮処分決定を認可した。
本件は,この原決定を不服とした抗告人が,原決定及び本件仮処分決定の取消し並びに本件仮処分申立ての却下を求めた事案である。

裁判要旨

少なくとも本件著作物の編集に当たり中心的役割を果たしたB教授,その編集過程で内容面につき意見を述べるにとどまらず,作業の進め方等についても編集開始当初からE及びB教授にしばしば助言等を与えることを通じて重要な役割を果たしたというべきA教授及び抗告人担当者であるEとの間では,相手方につき,本件著作物の編集方針及び内容を決定する実質的権限を与えず,又は著しく制限することを相互に了解していた上,相手方も,抗告人から「編者」への就任を求められ,これを受諾したものの,実質的には抗告人等のそのような意図を正しく理解し,少なくとも表向きはこれに異議を唱えなかったことから,この点については,相手方と,本件著作物の編集過程に関与した主要な関係者との間に共通認識が形成されていたものといえる。しかも,相手方が本件原案の作成作業には具体的に関与せず,本件原案の提示を受けた後もおおむね受動的な関与にとどまり,また,具体的な意見等を述べて関与した場面でも,その内容は,仮に創作性を認め得るとしても必ずしも高いとはいえない程度のものであったことに鑑みると,相手方としても,上記共通認識を踏まえ,自らの関与を謙抑的な関与にとどめる考えであったことがうかがわれる。

これらの事情を総合的に考慮すると,本件著作物の編集過程において,相手方は,その「編者」の一人とされてはいたものの,実質的にはむしろアイデアの提供や助言を期待されるにとどまるいわばアドバイザーの地位に置かれ,相手方自身もこれに沿った関与を行ったにとどまるものと理解するのが,本件著作物の編集過程全体の実態に適すると思われる。そうである以上,法14条による推定にもかかわらず,相手方をもって本件著作物の著作者ということはできない。

参照

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/269/086269_hanrei.pdf

キーワード

著作権 判例百選 保全異議 保全広告 著作者 共同著作者 著作者人格権