2011.4.6
「相続させる」旨の遺言の効力 推定相続人が遺言者の死亡以前に死亡した場合

平成23222日最高裁第三小法廷判決・最高裁HP

 

(要旨)

 「相続させる」旨の遺言は,当該遺言により遺産を相続させるものとされた推定相続人が遺言者の死亡以前に死亡した場合には,遺言者が代襲者等に遺産を相続させる旨の意思を有していたとみるべき特段の事情のない限り,その効力を生じないものとされました。

 

 事案は,簡略化すると次のとおりです。

 

 Aは,子であるBに対し,Aの遺産を全て相続させる旨を記載した条項と遺言執行者の指定に係る条項の2か条から成る公正証書遺言をしました。

 ところが,BがAより先に死亡し,その後Aが死亡したところ,Aのもう一人の子であるXとBの子であるYとの間で,上記遺言の効力につき争いとなったものです。

 

 そこで,最高裁は,次のとおり,判断しました。

 

(判旨)

 「被相続人の遺産の承継に関する遺言をする者は,一般に,各推定相続人との関係においては,その者と各推定相続人との身分関係及び生活関係,各推定相続人の現在呼び将来の生活状況及び資産その他の経済力,特定の不動産その他の遺産についての特定の推定相続人の関わり合いの有無,程度等諸般の事情を考慮して遺言をするものである。このことは,・・・「相続させる」旨の遺言がされる場合であっても異なるものではなく,このような「相続させる」旨の遺言をした遺言者は,通常,遺言時における特定の推定相続人に当該遺産を取得させる意思を有するにとどまるものと解される。

 したがって,上記のような「相続させる」旨の遺言は,当該遺言により遺産を相続させるものとされた推定相続人が遺言者の死亡以前に死亡した場合には,当該「相続させる」旨の遺言に係る条項と遺言書の他の記載との関係,遺言書作成当時の事情及び遺言者の置かれていた状況などから,遺言者が,上記の場合には,当該推定相続人の代襲者その他の者に遺産を相続させる旨の意思を有していたとみるべき特段の事情のない限り,その効力を生ずることはないと解するのが相当である。

 前記事実関係によれば,・・・本件遺言書には,・・・わずか2か条しかなく,BがAの死亡以前に死亡した場合にBが承継すべきであった遺産をB以外の者に承継させる意思を推知させる条項はない上,本件遺言書作成当時,Aが上記の場合に遺産を承継する者についての考慮をしていなかったことは所論も前提としているところであるから,上記特段の事情があるとはいえず,本件遺言は,その効力を生ずることはないというべきである。」

 

 

(コメント)

  遺言により遺産を承継させようとしていた者が遺言者の死亡以前に死亡した場合に,その者の代襲者(Aが遺言をせずに死亡したときは,Aの子であるXと,Bの子であるY〔代襲相続人〕が相続人となります。)等が遺産を承継することになるかについては,結局は,遺言をどう解釈するかという問題に帰着するものと考えられます。

 

  遺言の解釈にあたっては,遺言書の記載のほか,遺言者が遺言をした当時の事情及び遺言者の置かれていた状況などを考慮して,遺言者の真意を探求すべきであると考えられています(最三判昭和30年5月10日民集9巻6号657頁,最二判昭和58年3月18日集民138巻277頁,最三判平成5年1月19日民集47巻1号1頁等)。

 

  これまでは,裁判例は,代襲相続を認めるもの(東京高判平成18年6月29日判時1949号34頁等)と,認めないもの(札幌高判昭和61年3月17日判タ616号148頁,東京地判平成17年12月21日,東京地判平成21年11月26日判時2066号74頁等)とに分かれていました。

 

  本判決は,遺言の解釈を通じて,「相続させる」旨の遺言をした遺言者は,通常,遺言時における特定の推定相続人に当該遺産を取得させる意思を有するにとどまるから,《特段の事情》がない限り,代襲者等に遺産を相続させる旨の効力を生ずることはないと判断したものです。

 

  実際には,特段の事情の有無の判断は,ケースバイケースであるといわざるを得ません。

 

  そこで,後日の無用な紛争を避けるためにも,今後は,

 

   ① 相続させるものとされた推定相続人が遺言者の死亡以前に死亡した場合のことも考えて,そのことを予め明確に遺言書に記載しておく。

 

   ② 相続させるものとされた推定相続人が遺言者より先に死亡した場合は,遺言書を作成し直しておく。

 等の配慮が必要でしょう。

 

                                                       (り)