2011.4.5
行方不明者の死亡認定 失踪宣告・認定死亡

 平成23年4月2日にネット配信された日本経済新聞のニュースに下記のものがありました。

 

 「東日本大震災で津波などで行方不明になった人について,厚生労働省は2日までに,災害で死亡したと推定するまでの期間を現行の「1年」から「3カ月」に短縮する方針を固めた。家族の申請を前提として,年金や労災保険の遺族補償の支給を早める。政府が月内の成立を目指す被災者支援や復興関連の法案に盛り込むことを検討している。

 年金関連法や労災保険法は死亡認定を支給条件としているが,津波などの行方不明者は1年以上たたないと家庭裁判所が失踪宣告できず,死亡が認定されない。ただ飛行機事故や海難事故では3カ月後に死亡したと推定して支給する規定があり,特別立法で今回の災害への適用を検討している。

 死亡推定の期間が短縮されると,行方不明者の家族が申請すれば約3カ月後から受け取れることになる。遺族年金などは災害が起きた月にさかのぼって受け取れる。1995年の阪神大震災ではこうした法改正は実施されなかった。」

 

 

 ある人の死亡が労災給付や年金給付等の支給条件になっている場合に,その人が死亡したことが明らかでないときは,支給を受けることができません。

 また,人の死亡により相続が開始しますが,その場合にも生死が不明であれば,相続による処理ができません。

 

【失踪宣告とは】

 

 そこで,民法は,不在者の生死が不明の場合には,失踪宣告(しっそうせんこく)により,一定の要件のもとにその者を死亡したものとみなして,財産関係や身分関係について死亡の効果を発生させることにしています。

 認定死亡については,別途説明します。

 

≪失踪宣告の要件≫

1 失踪宣告には,利害関係人の請求が必要です。家庭裁判所に対する申立てをしなければなりません。

  失踪宣告により,年金や労災給付等の受給資格が認められる方や,相続人となる方などは,利害関係人ということができます。

 

2 生死不明の状態が一定期間(失踪期間)継続することが必要です。

  ①普通失踪と,②特別失踪とがあり,期間に違いがあります。

 ① 普通失踪の場合(民法30条1項)

   行方不明者の生死が7年間明らかでないとき

 ② 特別失踪の場合(民法30条2項)

   特に死亡の可能性の高い危難に遭遇した場合,すなわち,戦地に臨んだ者,沈没した船舶に在った者,その他死亡の原因となるべき危難に遭遇した者の生死が,戦争が止んだ後,船舶が沈没した後,又は,その他の危難が去った後,1年間明らかでないとき

 

3 家庭裁判所が公示催告等の手続を経ることが必要です。 

  家庭裁判所は,公示催告期間(①普通失踪の場合は,6か月以上,②特別失踪の場合は,2か月以上)を定めて,公示催告をなし,事実の調査等をした上で,審判で宣告をすることになります。

 

 ≪効果≫

  特別失踪の場合,危難が去った時に,死亡したものとみなされます。

  この死亡の時期は,遺族年金等の受給や,相続においても,重要になります。

  なお,後で生存していたことが明らかになったとき,または,異なる時期に死亡したことが明らかになったときなどは,失踪宣告の取消しの手続をする必要があります。

 

  

 上記報道によれば,今回の大震災で生死が不明となった人については,②特別失踪により死亡したものと扱うことを前提としているものと思われ,認定死亡の制度は念頭に置いていないようです。

 

 

【認定死亡とは】

 

 認定死亡とは,戸籍法により,水難,火災その他の事変によって死亡した者がある場合に,その取調べをした官庁または公署の報告に基づいて,戸籍に死亡の記載がなされるべきものとされている制度で,これにより死亡が推定されることになります。

 

 

 認定死亡は,死亡の蓋然性が高いことを前提に厳格な要件のもとに行われており,官庁や公署の調査や報告を待たなければなりません。

 そのため,改正案では,特別失踪の失踪期間を短縮することにより,年金や労災保険の遺族補償の支給を早めようとしているものと考えられます。

 

 ですから,本来であれば,震災が止んだ後,「1年」が経過してから,利害関係人が家庭裁判所に失踪宣告を申し立てることになりますが,改正案では,この「1年」を「3か月」に短縮しようというもののようです。

 

 今後の改正の動向に注目していきましょう。

 

 なお,海難事故や飛行機事故について,例えば,労働者災害補償保険法では,下記のように規定されています。

 

労働者災害補償保険法

第10条 船舶が沈没し,転覆し,滅失し,若しくは行方不明となった際現にその船舶に乗っていた労働者若しくは船舶に乗っていてその船舶の航行中に行方不明となった労働者の生死が三箇月間わからない場合又はこれらの労働者の死亡が三箇月以内に明らかとなり,かつ,その死亡の時期がわからない場合には,遺族補償給付,葬祭料,遺族給付及び葬祭給付の支給に関する規定の適用については,その船舶が沈没し,転覆し,滅失し,若しくは行方不明となった日又は労働者が行方不明となった日に,当該労働者は,死亡したものと推定する。航空機が墜落し,滅失し,若しくは行方不明となった際現にその航空機に乗っていた労働者若しくは航空機に乗っていてその航空機の航行中行方不明となった労働者の生死が三箇月間わからない場合又はこれらの労働者の死亡が三箇月以内に明らかとなり,かつ,その死亡の時期がわからない場合にも,同様とする。