2011.4.5
同時死亡の推定

 同時死亡の推定について

 

Q 今回の震災で複数の近親者を亡くしましたが,死亡の先後が不明の場合,相続関係はどうなるのですか。

 

A いずれが先に死亡したかが明確ではないときは,同時に死亡したと推定されます。

  同時に死亡した者の間では,相続は生じないことになります。

  

 

◇ 相続の開始時期

  相続は,被相続人が死亡した時に開始します。複数の親族が異なる時点で死亡したことが明らかになれば,相続人の範囲や法定相続分を確定することができます。

  しかし,複数の親族が死亡したものの,その死亡時期の先後が不明な場合があります。特に,今回の震災のように,数人が同一の危難に遭遇してお亡くなりになったような場合には,死亡の前後の立証が不可能に近いと思われます。

  このような場合,いずれが先に死亡したかにより,相続人の範囲や法定相続分などが異なることになるため,問題がありました。

 

◇ 具体例

  Aは,夫Bと一人息子Cを,震災により亡くしてしまいました。夫Bの両親(D・E)は存命しています。

 

父D-----母E

   |

  夫B-----女性A

     | 

     子C

 

  同一の震災でB・Cが死亡した場合,Bが先に死亡したと認定されれば,まずBにつき,相続が発生します。その相続人は,妻Aと息子Cとなります。相続分は2分の1ずつです。

  次に,息子Cも亡くなっていますから,息子Cにつき,相続が発生します。その相続人は,息子Cの母親であるAのみです。したがって,この場合には,Aが息子Cの取得した相続分も相続することになり,結局,Aが全てを取得することになります。

 

  一方,息子Cが先に亡くなり,夫Bが続いて亡くなった場合は,まず息子Cにつき,相続が発生します。その相続人は,息子Cの両親であるAとBになります。相続分は,2分の1ずつです。

  次に,夫Bも亡くなっていますから,Bにつき,相続が発生します。その相続人は,妻Aと夫Bの両親(D・E)となります。相続分は,妻Aが3分の2,DとEは,3分の1を等分しますので,6分の1ずつになります。

  このように,死亡の前後により,相続人の範囲や取得する相続分について差異が生じることになります。

 

◇ 同時死亡の推定

  そこで,このような取扱いの不合理や,それに関連する相続紛争を避けるため,民法は,数人の者が死亡した場合に,そのうちの一人が他の者の死亡後に生存していたことが明らかでないときは,それらの者は同時に死亡したものと推定するものと規定しました(32条の2)。この規定により,同時死亡者間では互いに相続が生じないことなります。

 

  前記の例では,夫Bと息子Cは,同時に死亡したものと推定されます。

  したがって,夫Bは息子Cの財産を相続しませんし,息子Cも夫Bの財産を相続しません。

  夫Bがその財産を息子Cに遺贈する旨の遺言を作成していたときも,遺贈は効力を生じません(994条1項)。

  夫Bの財産については,妻Aと夫Bの両親(D・E)が相続します。相続分は,Aが3分の2,両親(D・E)は6分の1ずつです。

  息子Cの財産については,息子Cの母親Aが全てを相続により取得することになります。

  なお,Cに子がいるときは,その者が代襲相続人となります(民法887条2項)。その場合,相続分は,Aが2分の1,Cの子が2分の1になります。

 

 

 ◇ 失踪宣告の場合

   BとCが震災により行方不明になり,失踪宣告がなされた場合も,震災の止んだ時に,死亡したものとみなされますので,同時に死亡したものとして,上記と同様の扱いをすることになるでしょう。