2010.12.10
最近の1冊  「木暮荘(こぐれそう)物語」(三浦しをん、祥伝社)


「木暮荘(こぐれそう)物語」(三浦しをん、祥伝社)


 本を購入するとき、皆さんは何を基準に選んでいますか? 私の場合は、手に取って斜め読みして何となく感じる「ゾクゾク感」ですかね。
 三浦しをんの小説で言えば、箱根駅伝を描いた「風が強く吹いている」を手に取ったときにこれを感じました。読んでいてもかなり感情移入してしまいました(映画もけっこう良かったです。スポーツ物の映画ではルーキーズも当たりでした。)。この同じ感動を期待して「まほろ駅前番外地」に行きましたが「ゾクゾク感」はあまりありませんでした(個人的嗜好の問題かも。なぜならこのシリーズはその後も続いて好調のようですから。なお、まほろ駅は町田駅をモデルにしています-町田在住者必読?)。
 「木暮荘物語」は、立ち読みしていて少し「ゾクゾク感」があったので購入。
 この本は、その題名のとおり木暮荘という世田谷代田にあるぼろアパートの住人達をめぐる(必ずしも住人だけではない。大家の飼い犬ジョンも立派に絡んでます。)物語です。章ごとに、坂田繭(フラワーショップ店員の住人。変形同棲中。)、木暮(大家。家族を残して気楽な1人住まい。)、峰岸美禰(ジョンをトリミングしたいトリマー。やくざの愛犬をトリミング中。)、佐伯(繭のフラワーショップの女性オーナー。夫は正体のよくわからない女と不倫中。)、神崎(サラリーマンの住人。下の部屋を床の節穴から覗き見中。)、光子(女子大生の住人。実はさみしい、覗かれる女子大生。)、瀬戸並木(繭の元彼。放浪中。)なる主人公が登場し、木暮荘住人と絡まりながらひと騒動が起こるという一種のオムニバス小説です。
 女子大生あり、OLあり、若者あり、中年あり、老人あり、でそれぞれに物悲しい悩みを持っていて、それが何とも解消される訳でもなく、ハッピーエンドになるわけでもなく、重い話でもなくかといって軽くもなく、中途半端に終わっているのがそれなりによろしいです。もしかして三浦しをんはアパートものが結構うまいのかもしれません。「風が強く吹いている」も一種のアパートもの(陸上部の寮みたいな)でした。
 それにしても、「マジでぇ?ていうかそれ、超やばいって。イダっちマジ卑怯(ひきょう)くね?」(女子大生)、「お支払いはカードでもできますが、現金ということでよろしかったですかぁ。」(デリヘル嬢)には思わず笑ってしまいました。
 ちなみに三浦しをんは女性作家でまだ若いです。すでに直木賞もとってます。こういう作家がこれからの中間小説(大衆小説?)の文壇を担うのでしょうね。
 中途半端な読後感で「ややゾク」の小説でした。
                                                   以 上(K)