2010.12.16
最近の1冊  「知的余生の方法」(渡部昇一、新潮新書)

「知的余生の方法」(渡部昇一、新潮新書)


 渡部昇一の「知的生活の方法」の老年版である。「知的生活の方法」は34年前に書かれたベストセラー書です。
 渡部先生のいう知的生活とは何か?それは一言でいえば、本を読み続ける生活のことです。そのためにはどうしたらよいかを自己の体験を踏まえて書いたものが前著「知的生活の方法」でした。その前には梅棹忠夫の「知的生産の技術」もベストセラーになっていました。そう、当時は「知的・・・・」が全盛期だったのです(現在の「インテリジェンス」ブームのようなものか。)。渡部先生はその後たしか続編も出されたと思いますが、前著を上回るものではありませんでした。なぜなら内容をほとんど憶えておりませんので。
 そして今回の老年版知的生活の方法は、定年退職(およそ60歳を想定)したあとの知的生活をどのように有意義に送るべきかというのがテーマです。
 しかしその知的生活はやはり、死ぬまで本を読み続ける生活であり、今までの価値観を修正して豊かな老後の知的生活を過ごしましょう、というものでした。
 うーん一貫していますね。ブレてませんね。
    「少にして学べば、即ち壮にして為すあり
    壮にして学べば、即ち老いて衰えず
    老いて学べば、即ち死して朽ちず」(江戸後期の儒学者佐藤一斎)
です。
 これをいつもの渡部流に、古今東西の書物と体験を踏まえて流れるような文章で書かれております(昔から渡部先生の文章のうまさには感心させられております。)。書かれていることはそれぞれごもっともでその教養と博学には敬意を表します。しかし、お酒を飲む時間があったら知的生活に充てよ、といわれてもなぁ。われわれは学者でも研究者でもないし、困りましたね。
 もともと「知的生活の方法」は、若い研究者に向けて書かれたもので、それが想定外の読者に支持されてベストセラーになったという本ですから、本書も主に研究者に宛てたメッセージなのかもしれません。
 あくまで書物重視で、インターネットや電子書籍から得る情報と、読書から得る知識とは本質的に違う、それは食物とサプリメントの関係である(サプリメントだけでは子供は育たない。)などは確かにそうかもしれないと納得したりします。
  渡部先生は昭和15年生まれで80歳。年齢を経てもその頭脳は明晰です。
  最後に、読書家は長寿が多いそうですから、皆さんも読書に励みましょう。
                                                                              以 上(K)