2011.1.8
最近の1冊  「エチュード」(今野敏、中央公論新社)

「エチュード」(今野敏、中央公論新社)

 

久しぶりの今野敏だ。エチュード? 主人公碓氷弘一は警視庁捜査一課の刑事だ。渋谷と新宿の繁華街で同じような通り魔事件が起きた。凶器は包丁だ。犯人は捕まった。現行犯逮捕だ。模倣犯なのか。しかしいずれも完全否認だ。逮捕に協力者がいた。しかし姿を消した。逮捕にあたった警察官のだれもがその協力者の人着を憶えていない。顔も、髪型も、服の色も、どんな服装だったかも。思い出そうとすると逮捕された犯人のことが頭に浮かぶのだ。甲高い声以外は。不思議だ。誤認逮捕か。やっかいな事件だ。警察庁心理調査官藤森紗英の登場だ。美人だ。心理調査官なんて本当にいるのか? 碓氷と紗英の捜査が始まった。紗英の分析は協力者が故意に自分の印象と被疑者の印象をすり替えた? そんなことが可能なのか。本当の犯人は協力者なのか。いったいどんなトリックだ。また事件は起こるのか。 起こる。どこで。こんどは池袋か。いや、また渋谷で。愉快犯か。警察への挑戦か。再び事件は渋谷で起きた。紗英の予想どおりだ。状況も全く同じだ。だが逮捕協力者が今回は身柄を確保されていた。逮捕に協力した覚えはないと言っている。犯人にしがみついていたのは別の男だと。どういうことだ。協力者のすり替えも行ったのか? マジックだ。協力者の話はごく自然だ。しかし質問する紗英の先を読んでいる。どういうことだ? 犯人なのか。協力者は警官に送られて家に返された。しかし途中でいなくなった。「エチュードなんですよ。」と独り言を言って。協力者は偽名で別人を装っていた。なぜ? どこにいったのか。犯人は何を狙っているのか。紗英のプロファイリングが始まった。犯人との心理戦だ。露骨に紗英への反感をむき出しにする捜査員たち。地道な捜査は無駄なのか。果たしてプロファイリングで犯人を逮捕できるのか。紗英の犯人像は? そして紗英は犯人の心理の隙をついた。その結末は如何。

 というようなお話です。以上、ハードボイルド調で書いてみました。

  「エチュードとは、フランス語で勉強の意味です。日本では、主に芸術の世界に使われます。美術の世界では、習作という意味です。絵画や彫刻のための下絵のこともそう呼びます。演劇の世界では、即興で演じていく稽古のことをいいます。そして、音楽の世界では練習曲のことです。」

  「プロファイリングとは、犯罪者の行動や心理を分析して犯人像を推定すること。」

                                                   以 上(S)