2011.1.21
最近の1冊 「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」(岩崎夏海、ダイヤモンド社)

「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」(岩崎夏海、ダイヤモンド社)

 

 経営学の父と呼ばれるピーター・F・ドラッカーの書いた「マネジメント」の経営哲学を公立高校の弱体野球部で実践してみたらどうなるかという青春小説である。野球部を見事に蘇生させていく小説として感動させるとともにドラッカーのマネジメントの基本を学べるという一石二鳥の本である。私自身正直ドラッカーという名前は知っていたもののその著書の中身はほとんど知りませんでした。 
 川島みなみという高校2年の女子高生が都立程久保高校野球部のマネージャーになり、マネージャーの意味を調べているときにドラッカーの「マネジメント」に出会い、この本に基づき試行錯誤しながらついに甲子園出場に導くという話ですが、これがドラッカーのマネジメント理論の実践によって成し遂げられていくわけです。
 たとえば、「自らの事業は何かを知ることほど、簡単でわかりきったことはないと思われるかもしれない。鉄鋼会社は鉄をつくり、鉄道会社は貨物と乗客を運び、保険会社は火災の危険を引き受け、銀行は金を貸す。しかし実際には、『われわれの事業は何か』との問いは、ほとんどの場合、答えることが難しい問題である。わかりきった答えが正しいことはほとんどない。」「企業の目的と使命を定義するとき、出発点は1つしかない。顧客である。顧客によって事業は定義される。事業は、社名や定款や設立趣意書によってではなく、顧客が財やサービスを購入することにより満足させようとする欲求によって定義される。顧客を満足させることこそ企業の使命であり目的である。」「したがって顧客は誰かとの問いこそ、個々の企業の使命を定義するうえでもっとも重要な問いである。」とドラッカーは問いかける。そしてこれはやさしい問いでも、答えがわかりきった問いでもないという。この問いに対する答えによって企業の命運が決せられるというのだ。
 果たしてみなみは、野球部という組織をどう定義づけ、誰を顧客と考え、どのようにドラッカーの教えを応用していくのか。読者も考えさせられながら思わず読み進んでしまうのである。
 「1.みなみは『マネジメント』と出会った。2.みなみは野球部のマネジメントに取り組んだ。3.みなみはマーケティングに取り組んだ。4.みなみは専門家の通訳になろうとした。5.みなみは人の強みを生かそうとした。6.みなみはイノベーションに取り組んだ。7.みなみは人事の問題に取り組んだ。8.みなみは真摯さとは何かを考えた。」という章立てで、ドラッカーのマーケティング理論やイノベーション理論がかみ砕かれて織り込まれ、みなみによってその理論が実践されていく。勉強になりました。
 「マネジメント」は1973年に書かれたものということですが、読みたくなりますね。書店ではそういう読者を見越して2冊並べて置いてあります。そしてこの本はすでに180万部突破。マンガ化、アニメ化、映画化が決定しているそうです。反面、「マネジメント信仰が会社を滅ぼす」という本も出ているので、ドラッカーの評価は読者に任せるしかありません。
                                                                                            以上(O)