2011.2.21
最近の1冊 「津山三十人殺し 最後の真相」(石川清、ミリオン出版)

 今から73年前(昭和13年5月)に岡山県津山で起きた惨劇事件(津山事件)の真相を追うノンフィクションである。津山事件は、横溝正史の小説「八つ墓村」のモデルになった事件である。ただし「八つ墓村」はあくまで小説であり、フィクションであることはいうまでもないが。 
 猟銃と日本刀で一夜に祖母を始めとして集落の30人を惨殺したのは都井睦雄という22歳の青年であった。都井睦雄は殺害後、3通の遺書を残して猟銃で自殺してしまった。犯人の自殺と事件を知る村人の口の重さ、そして何より捜査資料の大半が公表されていないことが、真相の究明を困難にし、事件が単なる睦雄による猟奇事件としてしか扱われてこなかった理由でもある。しかし、事件の真相と構図は果たしてどのようなものなのか。著者はこれをアメリカの図書館に眠っていた捜査報告書、睦雄の3通の遺書、現地取材などをもとに追っていく。
 そしてそこには事件後も睦雄一家が隠さなければならなかった秘密があったことを明らかにする。また、事件のキーパーソンであり、今も生存している睦雄の恋愛対象であった女性(94歳)を探しだし、取材していく。
 著者は10年前に津山事件についての記事を初めて雑誌に掲載した。それはちょうど大阪池田市の大阪教育大学付属池田小学校の児童殺傷事件が起きたときだ。この池田小事件を上回る事件として津山事件を取り上げている。次いで5年前に2回目の津山事件の記事を書いた。今回はこれらを下敷きにしたものかと思いきや、3回目の本書で、事件に対する解釈は全く異なったものになったと著者はいう。
 これまで闇の中にあった捜査報告書の内容や睦雄の3通の遺書の内容の真偽、睦雄と祖母の関係の新たな発見、村の中の絡み合った男女関係などを詳細に検証したことで、事件のまったく違った側面が見えてきたということであろう。それは読んでいてよくわかる。
 しかし重い。なかなか一気に読み進めないのである。内容の重さの故か、それとも著者の筆致によるものなのか、判断がつきかねる。
                                                                         以上(R)