2011.6.22
最近の1冊 「ひとり飲む、京都」(太田和彦、マガジンハウス)

 太田和彦の最新刊です。太田和彦氏の人となりについては以前に述べたとおりです。
 本書は、東京に住む著者が、「せめて1週間、仕事も家庭も捨て、単身で1つの町に住んでみよう。」「まず実行。1週間、好きなところに引っ越して毎夜酒を飲もう。ささやかな夢の実現だ。行く先は京都に決めた。」ということで、夏と冬の1週間の京都生活を酒を中心に楽しむといううらやましい生活が書き込まれている。
 私の知人にも、リタイア後の何年間かを京都に住んで楽しみながら暮らしたいという人がいる。若い頃から年3回くらい欠かさず京都に行き楽しんでいる。たしかに京都の町は飽きることがない。しかし住んでしまうことはなかなかできないので、太田流の京都生活もひとつの方法だ。
 著者の京都での1日の生活は、大体、朝はなじみの喫茶店でゆっくりコーヒーを楽しみ、しばし散策。昼はうどん屋などで軽くすませ、午睡などして、いよいよ夕方から出勤。居酒屋、バーを梯子。大体5時ころから飲み始め、深夜12時か午前1時ころにホテルに帰るというものだ。夕方からが本番だが、朝、昼の京都の風景の的確な観察眼も素敵である。
 訪問する居酒屋は、著者常連の「赤垣屋」を始め、祇園、先斗町、木屋町他の多数の店だ。高級料亭などはない。ひとつの店の構えから、料理、酒のすみずみまで書かれていて、居酒屋通の真骨頂が発揮される。何とも楽しくまたうらやましい。
 本の最後で著者はいう。定番の京都ガイドは、「おおむね表面的であまりリアリティを感じない。観光だから表面的でよいのかもしれないが、自分の足で歩いた感じがない。一方京都は表だけではわからない。観光で近づけない奧の奧を知らなければ本当の京都はわからないとよく言われる。そこをねらって雑誌は『地元だけが知る本物の京都』を記事にする。きっとそうだろう。・・・この本は京都通が書いた本ではないと言い切ってしまえばよい。夏冬1週間ずつの間に経験したこの以上のなにものでもない。」と。もちろん謙遜だろうが、著者の自分の目で見た京都が確実に読者を京都通にさせている。

以上(K)