2011.7.14
最近の1冊 「大人になると面白い!学校で習った古文・漢文」(小川義男監修、洋泉社)

 最近、山川出版社が、「もう一度読む山川日本史」、「もう一度読む山川世界史」など、高校教科書を社会人に読ませるシリーズを刊行している(政経、倫理も発行済み)。たしかにあらためて高校教科書を読んでみると、受験という大目標もないし、知識や社会的経験が当時とはまったく違うから、苦しむことなく楽しみながら(?)読むことができる。また、知識がきれいに整理されることもある。

 では、高校で習った古文や漢文を読み直してみるとどうなのだろうか。

「大人になると面白い!」とあるが本当に面白いのか。

 本書は、「古文」「和歌・俳句」「漢文」と分けられ、当時誰もが教科書で目にした(かもしれない?)古典の名作の一部が収められ、解説が付される。

 私が注目したのはとくに和歌の項目だ。

 

「恋ひ恋ひて逢える時だに(うつく)しき 言尽くしてよ長くと思はば」(大伴坂上郎女)

「あかねさす紫草(むらさき)野行き標野(しめの)行き 野守は見ずや君が袖振る」(額田王)

「紫草(むらさき)のにほへる妹を憎くあらば 人妻故に我恋ひめやも」(大海人皇子)

-万葉集

「思いつつ寝ればや人の見えつらむ 夢と知りせば覚めざらましを」(小野小町)

「わが恋はむなしき空にみちぬらし 思いやれども行く方もなし」(詠み人知らず)

-古今和歌集

「桐の葉も踏み分けがたくなりにけり かならず人を待つとなけれど」(式子内親王)

-新古今和歌集

「あしひきの山鳥の尾のしだり尾の ながながし夜をひとりかも寝む」(柿本人麻呂)

-小倉百人一首

 何と色恋の歌をいろいろと学んでいたことか。当時その微妙な意味がわかるはずもないが(古文では源氏物語がその最たるものである)、いま読めばなるほどなと思うのである。

 読書というものは、「難しさ」と「面白さ」との競争で、学生では難しくて読めなかったものでも、卒業後に知識や思考力が高まっていくことで難なく読みこなすことができる。そして面白さが難しさを上回るのだと著者は言う。

 そのとおりだと思う。たとえば、小林秀雄を今読んだらどんな感想を持つものだろうか。格別な感銘を受けるかも知れない。しかしこの楽しみはもう少し後にとっておくことにしよう。

以上(A)