保証債務と相続③ 身元保証

Q 身元保証人が死亡した場合,その相続人は,保証債務を相続するのですか。

A 身元保証は,雇用契約上の被用者の債務不履行,不法行為等によって生じる損害賠償債務を保証する,将来の債務の保証です。
 父親が友人の就職の際に身元保証人になっていた場合に,身元保証人である父親は,友人が債務不履行や不法行為によって会社に損害を与えた場合には,その損害を友人に代わって会社に弁済しなければならない義務を負っていたことになります。
 では,身元保証人が死亡した場合に,身元保証債務が相続人に相続されるでしょうか。
 この点,大審院昭和2年7月4日判決民集6巻436頁は,身元保証債務は,通常の保証債務と異なり,保証人の責任の及ぶ範囲が広範になり,被用者と保証人の間の信頼関係を基礎とするものであって,専属的性質を有し,特別の事情がない限り,身元保証人の死亡によって消滅し,相続人によって承継されないとしました。
 その後,昭和8年に,身元保証人を保護するため,身元保証に関する法律(身元保証法)が制定され,
 ①身元保証の存続期間の制限(上限は5年,期間を定めない場合には原則として3年)
 ②保証人に危険が及ぶ一定の場合における使用者の保証人への通知義務
 ③身元保証人の解約権
 ④保証責任の限度を定めるについての裁判所の広い裁量権
が認められるなど,身元保証人の責任に一定の制限が付されましたが,相続性については規定が置かれませんでした。ただ,その後の大審院昭和18年9月10日判決民集22巻948頁でも,身元保証法施行の前後を問わず,身元保証債務は,特別の事情がない限り,相続されないと判断され,現在でも,そのように考えられています。
 ですから,特別の事情がない限り,身元保証人の相続人は,身元保証債務を相続せず,会社に対して責任を負わないことになります。
 ただし,友人が会社に損害を与えた後に身元保証人が死亡した場合には,既に具体的に損害賠償債務が発生していますから,通常の保証と同じように相続されることになります。