賃借人の賃料不払いと家財道具の処分,鍵の取り換え等
1 不動産にまつわる問題【Q&A】

Q 「建物の賃借人が賃料を滞納しています。賃貸借契約書には『賃借人が賃料を滞納した場合,賃貸人は賃借人の承諾を得ずに本件建物に立ち入り,適当な処置をとることができる』という条項があるのですが,賃借人に断らずに居室に入ったり,鍵を取り換えたりすることはできますか?
また,契約を解除した後,期限を指定して家財道具等の搬出を求めたにもかかわらず,賃借人が履行しなかった場合,その家財道具等を搬出・処分することはできますか?」

A 「原則として,どの行為も許されません。
司法手続によらずに自己の権利を実現するいわゆる“自力救済”は,原則として許されず,ただ,法的手続によったのでは権利の実現が不可能または著しく困難であると認められる緊急やむを得ない特別の事情がある場合に,その必要の限度を超えない範囲内で例外的に許されるにすぎません(最3判昭和40年12月7日民集19巻9号2101頁)。
賃貸借契約書に上記のような条項があっても,その特約は,このような特別の事情がある場合を除いて,公序良俗(民法90条)に反し,無効とされます(東京地判平成18年5月30日判時1954号80頁等)。
したがって,賃貸人や管理会社がこうした手段に及んだ場合は,民法上の不法行為となり,賃借人に対して慰謝料等の損害を賠償しなければならないことになります(東京地判平成18年5月30日判時1954号80頁,東京高判平成3年1月29日判時1376号64頁等)。
なお,「賃借人が建物を明け渡した後に残された物(残置物)がある場合は,所有権を放棄したものとみなして任意に処分することができる。」との賃貸借契約書の条項については,一般に有効であると解されています。

最近,家賃債務保証業者等による,質問のような行為が社会問題化したため,「賃借人の居住の安定を確保するための家賃債務保証業の業務の適正化及び家賃等の取立て行為の規制等に関する法律案」が国会に提出され,平成22年4月21日参議院で可決され,6月16日衆議院で継続審査の議決がされています。
この法律案によれば,家賃債務保証業者等が家賃の取立てにあたって賃貸住宅の鍵の交換や動産の持ち出しをすること等は禁止され,違反した場合は罰則の適用を受けることになります。」