Q 根保証(信用保証)をしていた保証人が死亡した場合,その相続人は,保証債務を相続するのですか?
A 根保証(信用保証)は,継続的な取引関係から将来生じる不特定多数の債務を主たる債務として保証するものです。例えば,継続的売買契約により生じる買主が将来負うべき債務を保証する場合や,銀行との間の当座貸越契約,手形割引契約等の一定の取引関係から将来発生する債務を保証する場合などです。
このような根保証においても,責任の限度額(極度額)及び期間について定めのない場合には,保証人の責任の範囲が広範になり,契約当事者の間の人的信用関係を基礎とするものであるため,このような保証人の地位は,特段の事情のない限り,相続人に承継されないと考えられています(最高裁昭和37年11月9日民集16巻11号2270頁等)。ただ,この場合でも,被相続人の生前既に主債務が発生していたときは,相続人において保証債務を承継することになります。
これに対し,保証責任の限度額(極度額)が定められている根保証(限定根保証)においては,相続人が責任の範囲を予測することが可能であることから,相続人に承継されると解されており,保証期間のみが限定されている保証についても,判例は相続性を否定していないと言われています。このように,責任の限度額や期間が限定されているときには,根保証債務は相続されることになりますが,解約権の行使,責任の制限等が認められる場合もありますし,次にご説明するように,「貸金等根保証契約」の規定が置かれたこともありますので,まずは弁護士にご相談ください。
貸金等根保証契約
根保証をめぐっては商工ローン業者による悪用等の社会問題が生じたため,平成16年の民法改正により,「貸金等根保証契約」についての特則が規定されました。
これによれば,①主たる債務に貸金債務または手形割引による債務が含まれており,②自然人が保証人であるとき(この2つの要件をみたす根保証契約を「貸金等根保証契約」といいます)は,③極度額を定めなければ効力が生じないことになりました(極度額の定めは,書面によらなければなりません)。
また,元本確定期日のない貸金等根保証契約は,契約締結の日から3年が経過する日を元本確定日とするなどの規定も置かれました。
さらに,「主たる債務者又は保証人が死亡したとき」を元本確定事由としました。
したがって,改正法施行(平成17年4月1日)後に締結された貸金等根保証契約において,保証人が死亡したときは,保証人の地位は相続されず(その後に行われた融資等については,相続人は責任を負いません),当然に元本が確定したことになり,確定した債務について相続人が保証責任を負うことになります。また,改正法施行前に保証人が死亡していた貸金等根保証契約で,その主たる債務の元本が確定していなかったときは,施行日に保証人が死亡したものとみなして,施行日に元本が確定したことになるとされています。